場面緘黙について
場面緘黙は、特定の場面で一貫して「話したくても話せない、声を出せない」といった症状が一ヶ月以上続く状態を指します。
例えば、家で家族と話すなどの場面では、適切な声量で会話することができるのに、園や学校、職場、家庭外で知り合った人が近くにいる時などの特定の社会的な場面では、話せなくなります。
話せない場面で、表情を変えられなかったり、動きがゆっくりになったり、全く動けなくなる方もいます。
病名も改善のための選択肢も知らず、どうしたらよいかわからず自分を責めて、小さい頃から独りで悩む方もいます。
話せない場面では、相手に声を聞かせたり、話す姿や自分の意見を見せようとしたりすると、こわくなることがあります。
話すことを必要とした時、身体がその不安に反応して適切に対処できない様子を、反抗していると誤解されやすいです。
「なんで話さないの?」と聞かれた経験がある方もいますが、話さないと決めてから症状が出たわけではありません。それに答えるのは、「なんで話せるの?」に答えるのと同じくらい言語化が難しいです。
喉の動きを意識して声を出そうとしても、「喉に蓋をされたような感覚」に陥ると表現する方もいます。
<話す必要は?>
場面によっては、頷きか首振りなどの手段で答えられる質問なら応答できたり、筆談やスマホを用いてコミュニケーションをとる方もいます。
しかし、その状態が長期化すると、話すことへのハードルは高いままです。相手に声や返答を聞かれる不安になれる機会と、声でコミュニケーションをとる経験を損失します。
他者とのコミュニケーションを制限される不便さや、予想外のことが起きても声で助けを求めたり自ら対処したりできないといった大きな不安を感じ、話せず後悔した経験がある方も多いです。
したがって、話せる場面から話せるようになりたい場面まで、スモールステップで話せる範囲を広げるために、成功体験を積み重ねることが大切であると感じます。
成功体験は、適切な介入ができる方々の協力を得て、計画的に作ることが可能だと捉えています。(※)
本人は話したい意思があるのに、「いつか自ら勇気を出せる場面を見つけてスモールステップで頑張ってくれるだろう」と放置され、無理を承知でいきなり強要されたケースもあり、専門家と連携し早期から治療が行えるよう求める意見もあります。
スモールステップカフェにご来店いただき、体験スタッフが話したいのか、話す必要はあるのか考えていただけたらと思います。
(※)チェックシート等を用いながら、現在の状態や、特定の場面でどの程度、不安になるかを把握する、
本人の要望や不安レベルに合わせて、人・場所・活動などの要素がある場面を細かく分け、
「この条件なら少し難しくても話せそう」と思える場面を、本人と個別にコミュニケーションが取れる状況で一緒に探す、
相手に声や返答を聞かれる不安になれるまで継続的に取り組める課題を段階的に設定する など
話せない活動の例
・挨拶や返事
・感謝や謝罪の言葉を咄嗟に言う
・忘れ物や体調不良の報告
・肯定や弁明
・音読や発表
・雑談 など
動けない活動の例
・トイレに行く
・飲食
・会釈や指差し、挙手、筆談
・首を動かし視線を変える
・ヘルプカードを出す
・体育 など
※この文章は、一つの例として、場面緘黙を経験したスタッフが作成しました。
場面緘黙がある方、全員に当てはまるとは限りません。
詳しく知りたい方は、DSM,またはICDにおける診断基準や効果があるとされている治療法(段階的エクスポージャー等)を明記していて医師や心理士(師)が監修しているサイトをご確認ください。